指が白くなるのは寒さのせい?―Raynaud症候群の原因に「亢進症」は入らない
第104回医師国家試験 I問題 第17問
国試問題にチャレンジ
Raynaud症候群の原因とならないのはどれか。
- a.振動工具作業
- b.閉塞性動脈硬化症
- c.甲状腺機能亢進症
- d.全身性強皮症〉
- e.全身性エリテマトーデス〈SLE〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
Raynaud現象は、寒冷や精神的緊張を契機に手指の動脈が発作的に収縮し、皮膚色が蒼白→チアノーゼ→発赤と変化する現象で、基礎疾患のないものをRaynaud病、続発性のものをRaynaud症候群と呼びます。二次性の原因には、全身性強皮症・MCTD・SLEなどの膠原病、閉塞性動脈硬化症やBuerger病などの動脈疾患、振動工具作業、β遮断薬などの薬剤、クリオグロブリン血症、甲状腺機能低下症があります。甲状腺機能亢進症では熱産生の増加により皮膚血管が拡張するため原因にはならず、低下症と取り違えないことが重要です。高齢発症、左右非対称、指尖潰瘍、抗核抗体陽性、爪郭毛細血管異常は二次性を疑う手がかりになります。手の冷えという身近な訴えから膠原病などの基礎疾患を見つけ出す視点は、日常診療での早期診断に直結します。
解答・解説
正解はcです
Raynaud現象とは、寒冷刺激や精神的緊張をきっかけに手指(ときに足趾)の細い動脈が発作的に強く収縮し、皮膚色が蒼白→紫色(チアノーゼ)→赤色(反応性充血)と変化する現象である。蒼白期・チアノーゼ期にはしびれや冷感、充血期には拍動性の痛みやほてりを伴う。 このうち、背景となる疾患が見当たらないものをRaynaud病(一次性)、何らかの基礎疾患や外的要因に続発するものをRaynaud症候群(二次性)と呼ぶ。本問は後者の原因を問うている。 二次性の原因は、次のように整理すると覚えやすい。 ・膠原病:全身性強皮症、混合性結合組織病(MCTD)、SLE、Sjögren症候群、皮膚筋炎など ・動脈の器質的疾患:閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎(Buerger病)、胸郭出口症候群など ・職業性・物理的要因:振動工具の使用 ・薬剤:β遮断薬、麦角アルカロイド、一部の抗癌薬など ・血液の異常:クリオグロブリン血症、寒冷凝集素症、多血症など ・内分泌:甲状腺機能低下症 甲状腺機能については、低下症では代謝の低下と寒冷不耐性を背景にRaynaud現象を伴うことがあるのに対し、亢進症では熱産生が増え末梢血管は拡張傾向となるため原因にはならない。この対比を押さえていれば正解に到達できる。
選択肢考察
- ×a. 振動工具作業
チェーンソーや削岩機、グラインダーなどの振動工具を長期間使用すると、手指の血管・神経が繰り返し障害され、交感神経を介した血管収縮反応が過敏になる。これにより寒冷時に指が白くなる発作(白指、白ろう病)が起こり、振動障害(手腕振動症候群)として労働災害の対象となる代表的な二次性Raynaud現象である。したがって原因となる。
- ×b. 閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症(ASO)は、動脈硬化によって四肢の動脈が狭窄・閉塞し、末梢の血流が低下する疾患である。もともと内腔が狭くなっている血管では、わずかな血管収縮でも血流が途絶えやすく、寒冷による虚血症状がRaynaud現象として現れ得る。閉塞性血栓血管炎や動脈塞栓などとともに、器質的な動脈疾患による二次性Raynaud現象の原因となる。
- ○c. 甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモン過剰により代謝と熱産生が高まり、放熱のため皮膚の血管は拡張する。そのため皮膚は温かく湿潤し、暑がりとなる。末梢の血管収縮発作を起こす病態とは逆方向であり、Raynaud症候群の原因とはならない。一方、甲状腺機能低下症では寒がり・末梢の冷えを呈し、Raynaud現象を伴うことがある。亢進症と低下症を取り違えないことが本問のポイントである。
- ×d. 全身性強皮症〉
全身性強皮症(全身性硬化症、SSc)ではRaynaud現象が90%以上の患者にみられ、しばしば皮膚硬化に先行して初発症状となる。血管内皮の障害と内膜の肥厚により指動脈の内腔が狭くなり、これに血管の攣縮が加わるため発作が重症化しやすく、指尖潰瘍や指尖の陥凹性瘢痕を生じることもある。二次性Raynaud現象の代表的な原因である。
- ×e. 全身性エリテマトーデス〈SLE〉
SLEでも約2〜3割の症例にRaynaud現象がみられ、かつてはアメリカリウマチ学会の分類基準の一項目に含まれていた(1982年改訂で除外)。血管炎や免疫複合体による血管障害、抗リン脂質抗体に伴う血流障害などが関与すると考えられている。二次性Raynaud現象の原因となる。
一次性と二次性の見分け方
・一次性(Raynaud病):若年女性に多く、左右対称、症状は軽く、指尖潰瘍や壊死を生じない。抗核抗体陰性で、爪郭毛細血管の異常もない。 ・二次性(Raynaud症候群):発症年齢が比較的高い、左右非対称、指尖潰瘍・壊死を伴う、抗核抗体陽性、爪郭毛細血管の拡張・脱落がある、などの場合に疑う。
膠原病とRaynaud現象
・全身性強皮症:90%以上。初発症状であることが多い。 ・混合性結合組織病(MCTD):ほぼ全例にみられ、診断基準の共通所見に含まれる。抗U1-RNP抗体陽性。 ・SLE、Sjögren症候群、皮膚筋炎・多発性筋炎でもみられる。
治療の基本
寒冷を避け保温する、禁煙、誘因となる薬剤(β遮断薬など)の中止。薬物療法としてカルシウム拮抗薬、プロスタグランジン製剤、抗血小板薬などが用いられる。二次性では原疾患の治療を行う。
甲状腺機能と末梢循環
・亢進症:皮膚温暖・湿潤、暑がり、発汗過多。 ・低下症:皮膚乾燥・冷感、寒がり。Raynaud現象を伴うことがある。
POINT
・Raynaud現象:寒冷・緊張で指の蒼白→チアノーゼ→発赤。基礎疾患がないものがRaynaud病、あるものがRaynaud症候群。 ・二次性の原因:膠原病(全身性強皮症、MCTD、SLEなど)、閉塞性動脈疾患(ASO、Buerger病)、振動工具、薬剤(β遮断薬など)、クリオグロブリン血症、甲状腺機能低下症。 ・甲状腺機能「亢進」症は原因にならない(低下症と混同しない)。 ・全身性強皮症・MCTDではほぼ全例にみられる。
