StudyMed医師国家試験

暗室で眼にコンタクトレンズ電極―写真から読み解く網膜電図(ERG)

第103回医師国家試験 E問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第103回 E問題 第6問

暗室で行う眼科検査の写真を別に示す。  この検査で得られる情報はどれか。

第103回 E問題 第6問の問題画像
  1. a.眼軸長
  2. b.角膜内皮細胞数
  3. c.角膜知覚
  4. d.網膜電図〈ERG〉
  5. e.視覚誘発電位〈VEP〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は検査風景の写真から、何を調べている検査かを当てる問題だ。注目点は「暗室であること」と「電極がどこに付いているか」の2つ。写真をよく見ると、仰臥位の患者さんの両眼に白い輪のような器具が装着され、そこから導線が記録装置につながっている。耳たぶにもクリップが付いているね。これを見てどう考える?
医学生医学生
導線がつながっているので、何か電気的な信号を記録している検査だと思います。
ドクタードクター
いい着眼点だ。選択肢を「電極で電位を記録する検査か、そうでないか」で分けてみよう。電位を記録するのはどれとどれかな。
医学生医学生
網膜電図と視覚誘発電位の2つですね。眼軸長や角膜内皮細胞数は、電極を使うイメージがありません。
ドクタードクター
その通り。眼軸長は角膜にプローブを当てる超音波Aモードか、光干渉を利用した光学式の装置で測る。白内障手術で入れる眼内レンズの度数計算に欠かせない検査だね。角膜内皮細胞は角膜の透明性を保つポンプ役で、ほとんど再生しない。その密度はスペキュラーマイクロスコープという光学機器で撮影して数える。どちらも電極は使わないし、暗室で導線をつなぐ必要もない。
医学生医学生
角膜知覚は、眼科の臨床実習で先端に細い糸の付いたペンのような器具を見ました。
ドクタードクター
Cochet-Bonnet角膜知覚計だね。ナイロン糸を角膜に触れさせ、感覚が生じる糸の長さで三叉神経第1枝の機能をみる。糖尿病や単純ヘルペス角膜炎で低下するのが典型だ。これも電極とは無縁だね。さて、残るERGとVEPはどう区別する?
医学生医学生
どちらも光を当てて電位を見る検査なので、正直、写真だけだと区別が難しい気がします。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。決め手は「どこで記録するか」。ERGは網膜の反応を見るから、網膜に近い角膜の上にコンタクトレンズ型の電極を載せる。一方VEPは大脳の一次視覚野、つまり後頭葉の反応を見るから、電極は後頭部の頭皮に置くんだ。
医学生医学生
写真では電極が眼に直接付いていて、後頭部の電極は見当たらないから、網膜電図ですね。
ドクタードクター
正解。耳たぶの電極は基準電極や接地電極で、点眼麻酔のあと角膜にレンズ電極を載せ、フラッシュ光を当てたときの網膜全体の電位変化を記録する。暗室で行うのは、杆体の反応を評価するためにあらかじめ暗順応させる必要があるからだ。
医学生医学生
生理学の講義で、暗順応には杆体のロドプシンの再合成が関わると習いました。暗い所に目を慣らしてから測るわけですね。
ドクタードクター
そう、それがERGの暗室の意味だ。波形も押さえておこう。最初の陰性波がa波で視細胞由来、続く陽性波のb波は主に双極細胞やMüller細胞由来、b波に乗る細かい波が律動様小波で網膜内層の循環を反映する。杆体応答は暗順応下の弱い光で、錐体応答は明順応下や30Hzフリッカー刺激で分けて評価する。
医学生医学生
ERGが特に役立つ病気は何でしょうか。CBTの勉強で網膜色素変性と結びつけて覚えた記憶があります。
ドクタードクター
まさに代表だね。網膜色素変性では早期から振幅が著しく減弱し、進行すると平坦、つまり記録不能になる。ほかに小口病や先天停在性夜盲ではb波がa波より小さくなる陰性型ERG、網膜中心動脈閉塞症では内層障害でb波が低下する。白内障や硝子体出血で眼底が見えないときに、網膜機能が保たれているか確かめる目的でも使うんだ。
医学生医学生
VEPのほうは視神経炎で潜時が延びるんでしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。VEPは網膜から視神経、視路を経て視覚野までの経路全体を反映する。だからERGが正常でVEPが異常なら、障害は網膜より中枢側、たとえば視神経にあると推定できる。VEPは乳幼児や心因性視覚障害が疑われる人の他覚的な視機能評価にも役立つ。2つをセットで使うと、障害部位を網膜か視路かに切り分けられるんだ。
医学生医学生
電極の位置でERGとVEPを見分けて、組み合わせで病変の場所を絞る、という流れですね。
ドクタードクター
その通り。臨床では、眼底が見えない術前の患者さんや、原因不明の視力低下の評価でERGを依頼する場面がある。検査室が暗いのには理由がある、と覚えておくと写真問題にも強くなるよ。

まとめ

暗室で仰臥位の患者の角膜上にコンタクトレンズ型電極を装着し、耳朶に基準電極を置いて光刺激による電位変化を記録する検査は網膜電図(ERG)です。暗室で行うのは杆体応答を評価するために暗順応が必要だからで、a波は視細胞、b波は主に双極細胞・Müller細胞の反応を反映します。同じ電気生理検査でも視覚誘発電位(VEP)は後頭部の頭皮電極で視覚野の反応を記録し、電極の位置で区別できます。眼軸長は超音波や光学式装置、角膜内皮細胞密度はスペキュラーマイクロスコープ、角膜知覚はCochet-Bonnet知覚計で測り、電極は用いません。ERGは網膜色素変性の診断や眼底透見不能時の網膜機能評価に重要で、VEPと組み合わせることで障害部位を網膜か視路かに切り分けられます。

解答・解説

正解はdです

写真の読み取り

暗い部屋で、患者が仰臥位(あおむけ)に寝ており、両眼に白い輪状の器具(電極を組み込んだコンタクトレンズ)が装着されている。そこから何本もの導線が頭側の増幅器・記録装置へつながり、耳朶(耳たぶ)にも電極がクリップで付けられている。つまり「眼の表面に電極を置き、暗所で何らかの電位変化を記録している」検査である。

考え方

選択肢のうち、電極を用いて電気信号を記録するのは網膜電図(ERG)と視覚誘発電位(VEP)の2つに絞られる。眼軸長・角膜内皮細胞数・角膜知覚は、いずれも超音波や光学機器、細い糸などを用いる検査で、導線付きの電極は使わない。 ERGとVEPの違いは記録部位である。ERGは網膜の電気的反応を見る検査なので、網膜に近い角膜上(コンタクトレンズ電極)で記録する。VEPは大脳の視覚野(後頭葉)の反応を見る検査なので、後頭部の頭皮に電極を置く。写真では電極が眼に装着されており、後頭部の頭皮電極は確認できないため、この検査はERGである。暗室で行うことも、暗順応(杆体の働きを評価するため暗さに目を慣らすこと)を必要とするERGの特徴と合致する。

選択肢考察

  1. ×a.  眼軸長

    誤りである。眼軸長(角膜前面から網膜までの眼球の前後径、成人で約24mm)は、白内障手術で挿入する眼内レンズの度数計算や、近視の評価に用いる。測定法は、プローブを角膜に当てて超音波の反射で測るAモード法(接触式)と、光干渉を利用する光学式眼軸長測定装置(非接触式)である。いずれも電位を記録する電極は用いないため、写真の検査とは異なる。

  2. ×b.  角膜内皮細胞数

    誤りである。角膜内皮細胞は角膜の透明性を保つポンプ機能を担い、ほとんど再生しない。その密度はスペキュラーマイクロスコープという光学機器で内皮を撮影して算出する(正常成人でおおむね2,500~3,000個/mm2程度で、加齢や手術侵襲で減少する)。接触型と非接触型があるが、どちらも光学的な撮影であり、眼に電極を付けたり暗室で導線をつないだりする必要はない。

  3. ×c.  角膜知覚

    誤りである。角膜知覚は三叉神経(第1枝)による角膜の感覚を調べる検査で、先端にナイロン糸の付いたペン型のCochet-Bonnet角膜知覚計を用い、糸を角膜に触れさせて瞬目や自覚的な感覚が生じる糸の長さを測る。糖尿病、単純ヘルペス角膜炎、三叉神経障害などで低下する。電極や記録装置は用いないため、写真の検査とは異なる。

  4. ○d.  網膜電図〈ERG〉

    正しい。網膜電図(electroretinogram:ERG)は、光刺激に対する網膜全体の電気的な反応を記録する検査である。点眼麻酔後に電極を組み込んだコンタクトレンズを角膜上に装着し、耳朶などに不関電極(基準電極)や接地電極を置いて、フラッシュ光を当てたときの電位変化を増幅して記録する。写真の、両眼に装着されたコンタクトレンズ型電極と耳朶の電極、暗室という条件はERGの記録状況に一致する。杆体の反応を評価するためには、あらかじめ暗室で一定時間の暗順応を行う必要がある。網膜色素変性などで反応が減弱・消失することから、網膜の機能障害の診断に用いられる。

  5. ×e.  視覚誘発電位〈VEP〉

    誤りである。視覚誘発電位(visual evoked potential:VEP)も光刺激による電位変化を記録する検査だが、記録するのは網膜ではなく大脳の一次視覚野の反応であり、電極は後頭部の頭皮(後頭隆起の上方付近)に置く。刺激には白黒の格子模様が反転するパターン刺激やフラッシュ刺激を用いる。網膜から視神経・視路を経て視覚野に至る経路の機能を反映し、視神経炎などで潜時(反応が出るまでの時間)が延長する。写真では電極が眼表面に装着されており、VEPの記録配置とは異なる。

網膜電図(ERG)の基本

・光刺激で網膜に生じる電位変化の総和を記録する。網膜全体の機能を他覚的に評価できる。 ・主な波形:a波(最初の陰性波、視細胞=杆体・錐体由来)、b波(続く陽性波、主に双極細胞・Müller細胞由来)、律動様小波(b波上の細かい波、網膜内層の循環状態を反映)。 ・杆体応答は暗順応下の弱い光で、錐体応答は明順応下や30Hzフリッカー刺激で分離して評価する。

ERGが診断に役立つ主な疾患

・網膜色素変性:早期から振幅が著しく減弱し、進行すると記録不能(平坦)になる。 ・小口病、先天停在性夜盲:b波の低下によりa波よりb波が小さくなる陰性型ERGを示すことがある。 ・網膜中心動脈閉塞症:網膜内層の障害によりb波が低下する。 ・中間透光体の混濁(白内障、硝子体出血)で眼底が見えないときに、網膜機能が保たれているかの評価にも用いる。

ERGとVEPの比較

・ERG:記録部位は角膜(コンタクトレンズ電極)。評価対象は網膜。 ・VEP:記録部位は後頭部頭皮。評価対象は網膜から視覚野までの視路全体(特に視神経)。 ・ERGが正常でVEPが異常なら、障害は網膜より中枢側(視神経・視路)にあると考えられる。VEPは乳幼児や詐病・心因性視覚障害の他覚的視力評価にも利用される。

他の選択肢の検査機器

・眼軸長:超音波Aモード(接触式)、光学式眼軸長測定装置(非接触式) ・角膜内皮細胞密度:スペキュラーマイクロスコープ ・角膜知覚:Cochet-Bonnet角膜知覚計

POINT

・ERGは角膜上のコンタクトレンズ電極で網膜の電位変化を記録する。暗室・暗順応下で行う。 ・VEPは後頭部の頭皮電極で視覚野の電位を記録する。電極の位置でERGと区別する。 ・ERGは網膜色素変性の診断に重要(振幅低下~平坦化)。 ・眼軸長は超音波・光学式、角膜内皮細胞はスペキュラーマイクロスコープ、角膜知覚はCochet-Bonnet知覚計で測定し、電極は用いない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。