その色はメラニンか?―太田母斑とカフェオレ斑で整理する色素斑の正体
第102回医師国家試験 E問題 第39問
国試問題にチャレンジ
メラニン性色素斑がみられるのはどれか。2つ選べ。
- a.太田母斑
- b.類器管母斑
- c.結節性硬化症
- d.von Recklinghausen病
- e.Kasabach-Merritt症候群
対話形式の解説
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医学生まとめ
メラニン性色素斑には、表皮基底層のメラニンが増える茶褐色の表皮型(カフェオレ斑、雀卵斑など)と、真皮内のメラノサイトによりTyndall現象で青色調に見える真皮型(太田母斑、蒙古斑、青色母斑など)があります。本問では、三叉神経第1・2枝領域に生じる真皮メラノサイト系の太田母斑と、カフェオレ斑を特徴とするvon Recklinghausen病(NF1)が該当します。結節性硬化症の色素病変はメラニンが減少する白斑、類器官母斑は表皮・付属器の過形成、Kasabach-Merritt症候群は血管性腫瘍による血小板消費であり、いずれもメラニン増加とは無関係です。太田母斑にはQスイッチレーザーが有効で、NF1ではカフェオレ斑の数と大きさが診断基準となります。皮膚の色調を「何が原因で色がついているか」という視点で整理することは、母斑・母斑症の鑑別や小児の健診での気づきに直結します。
解答・解説
正解はa, dです
問われていること
「メラニン性色素斑」とは、メラニン色素の増加によって皮膚が褐色・青色・黒色などに見える斑のことである。メラニンの増え方には大きく二通りある。 1) 表皮型: メラノサイト(色素細胞)の数はほぼ変わらず、表皮基底層のメラニン量が増える。色調は茶褐色(例: カフェオレ斑、雀卵斑)。 2) 真皮型: 本来は表皮にあるはずのメラノサイトが真皮内に存在・増加する。深い位置のメラニンは光の散乱(Tyndall現象)で青〜灰青色に見える(例: 太田母斑、蒙古斑、青色母斑)。
考え方
各選択肢の皮膚病変が「メラニンの増加」によるものか、それとも「上皮・付属器・結合組織の過形成」「血管の増殖」「色素の減少」によるものかを区別すればよい。メラニン性色素斑をきたすのは、真皮メラノサイトが増加する太田母斑と、表皮基底層のメラニンが増加するカフェオレ斑をもつvon Recklinghausen病である。
選択肢考察
- ○a. 太田母斑
太田母斑は真皮メラノサイトが増加する真皮メラノサイト系母斑である。三叉神経第1・第2枝の支配領域(眼瞼、頬部、額、鼻翼など)に、通常片側性に褐色〜青色の色素斑が生じ、眼球結膜や強膜の青色斑を伴うこともある。日本人を含むアジア人の女性に多く、乳児期と思春期に発症のピークがある。自然消退はしないが、Qスイッチレーザー治療がよく効く。メラニン性色素斑の代表例であり正しい。
- ×b. 類器管母斑
類器官母斑(脂腺母斑)は、表皮、脂腺・アポクリン腺などの皮膚付属器、結合組織が過形成となる組織奇形である。頭部に好発し、出生時には脱毛を伴う黄色調の局面として気づかれ、思春期に脂腺の発達とともに隆起・疣状化する。成人以降に基底細胞癌や毛芽腫などの二次性腫瘍が生じることがある。メラニンの増加による病変ではないため誤りである。
- ×c. 結節性硬化症
結節性硬化症は常染色体顕性(優性)遺伝の母斑症で、TSC1またはTSC2遺伝子の異常による。皮膚所見は顔面の血管線維腫(かつて脂腺腫と呼ばれた)、葉状白斑、粒状白斑(confetti様)、シャグリンパッチ(粒起革様皮)、爪囲線維腫(Koenen腫瘍)などである。特徴的な色素病変はメラニンが減少する白斑であり、メラニン性色素斑をきたす疾患には当たらない。
- ○d. von Recklinghausen病
von Recklinghausen病(神経線維腫症1型、NF1)は常染色体顕性(優性)遺伝の母斑症で、NF1遺伝子の異常による。カフェオレ斑(扁平で淡〜茶褐色の色素斑)と多発性の神経線維腫が二大徴候である。カフェオレ斑は表皮基底層のメラニン増加による表皮型のメラニン性色素斑であり正しい。ほかに腋窩・鼠径部の雀卵斑様色素斑、虹彩小結節(Lisch結節)なども生じる。
- ×e. Kasabach-Merritt症候群
Kasabach-Merritt症候群(現象)は、主に乳児期に血管性腫瘍が急速に増大し、腫瘍内で血小板が捕捉・消費されて著明な血小板減少と消費性凝固障害(DIC様の状態)をきたす病態である。腫瘍の紫斑様の色調は血管増殖と出血によるもので、メラニンとは無関係であるため誤りである。かつては巨大血管腫に合併するとされたが、現在は乳児血管腫ではなく、カポジ肉腫様血管内皮腫や房状血管腫に合併するものと理解されている。
メラノサイト系の色素斑・母斑の整理
表皮型(茶褐色): カフェオレ斑、扁平母斑、雀卵斑(そばかす)、肝斑、老人性色素斑 真皮メラノサイト系(青〜灰青色): 蒙古斑、異所性蒙古斑、太田母斑、伊藤母斑(肩峰三角筋部に生じる太田母斑類似の病変)、後天性真皮メラノサイトーシス、青色母斑 母斑細胞系: 色素性母斑(母斑細胞母斑、いわゆるほくろ)、先天性巨大色素性母斑(悪性黒色腫の発生母地となりうる)
母斑症と皮膚所見
神経線維腫症1型: カフェオレ斑、神経線維腫、腋窩雀卵斑様色素斑、Lisch結節 結節性硬化症: 顔面血管線維腫、葉状白斑、シャグリンパッチ、爪囲線維腫(てんかん・知的障害とあわせて古典的三徴の一部) Sturge-Weber症候群: 三叉神経第1枝領域の毛細血管奇形(ポートワイン斑) Peutz-Jeghers症候群: 口唇・口腔粘膜・指趾の色素斑と消化管過誤腫性ポリポーシス
NF1のカフェオレ斑の基準
思春期前で最大径5 mm以上、思春期以後で15 mm以上のカフェオレ斑が6個以上あることが診断基準の一項目である。
POINT
・メラニン性色素斑: 表皮型(カフェオレ斑など、茶褐色)と真皮型(太田母斑・蒙古斑など、青色調) ・太田母斑 = 三叉神経第1・2枝領域の真皮メラノサイト増加、Qスイッチレーザーが有効 ・NF1 = カフェオレ斑+神経線維腫 ・結節性硬化症の色素病変は「白斑」(メラニン減少) ・類器官母斑は付属器・表皮の過形成、Kasabach-Merritt症候群は血管性腫瘍+血小板消費
