背が伸びない、思春期も来ない―身長と性腺の2軸で見抜くPrader-Willi症候群
第102回医師国家試験 E問題 第19問
国試問題にチャレンジ
低身長を伴う性腺機能低下症はどれか。
- a.Marfan症候群
- b.Cushing症候群
- c.Klinefelter症候群
- d.Prader-Willi症候群
- e.McCune-Albright症候群
対話形式の解説
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ドクターまとめ
性ホルモンは骨端線の閉鎖を促すため、性腺機能低下症では骨端線閉鎖が遅れて類宦官体型の高身長になりやすく、Klinefelter症候群がその典型です。低身長を伴う性腺機能低下症は、成長ホルモン分泌不全や染色体・遺伝子異常自体による成長障害を伴う場合であり、代表がPrader-Willi症候群です。Prader-Willi症候群は15q11-q13の父由来遺伝子が働かないインプリンティング疾患で、新生児期の筋緊張低下、幼児期以降の過食・肥満、低身長、知的障害、低ゴナドトロピン性性腺機能低下を示します。Marfan症候群は高身長で性腺機能正常、McCune-Albright症候群は思春期早発症、小児Cushing症候群は肥満を伴う成長停止が特徴で、いずれも条件に合いません。「身長」と「性腺機能」の2軸で疾患を整理しておくと、小児内分泌や遺伝性疾患の鑑別に幅広く応用できます。
解答・解説
正解はdです
本問は「低身長」と「性腺機能低下症」の両方を特徴とする疾患を選ぶ問題である。各選択肢を、身長(高身長か低身長か)と性腺機能(低下か、正常か、むしろ早発か)の2軸で整理すると解きやすい。 ・Marfan症候群: 高身長/性腺機能は正常 ・Cushing症候群: 小児では成長率低下による低身長/性腺機能低下は疾患の主徴ではない ・Klinefelter症候群: 高身長/性腺機能低下(高ゴナドトロピン性) ・Prader-Willi症候群: 低身長/性腺機能低下(主に低ゴナドトロピン性) ・McCune-Albright症候群: 思春期早発(性腺機能はむしろ亢進) このうち両方を満たすのはPrader-Willi症候群である。性腺機能低下症は、視床下部・下垂体の障害でゴナドトロピン(LH・FSH)が低い中枢性(低ゴナドトロピン性)と、性腺そのものの障害でゴナドトロピンが高くなる原発性(高ゴナドトロピン性)に分けられる。性ホルモンは思春期の成長加速と骨端線閉鎖を促すため、性腺機能低下では骨端線の閉鎖が遅れて四肢が長く伸び、類宦官体型の高身長になりやすい(Klinefelter症候群が典型)。これに対して、低身長を伴う性腺機能低下症は、成長ホルモン分泌不全の合併や染色体・遺伝子異常自体による成長障害がある場合で、Prader-Willi症候群やTurner症候群が代表である。
選択肢考察
- ×a. Marfan症候群
誤り。Marfan症候群はフィブリリン1をコードするFBN1遺伝子の変異による常染色体顕性(優性)遺伝の結合組織疾患である。高身長、長い四肢とくも状指、水晶体偏位、大動脈基部拡張・大動脈解離、僧帽弁逸脱などを呈する。高身長であり、性腺機能も通常は正常であるため、条件を満たさない。
- ×b. Cushing症候群
誤り。Cushing症候群はコルチゾールの過剰による疾患で、小児では体重増加(中心性肥満)とともに身長の伸びが止まり、低身長となるのが特徴である(単純性肥満では身長の伸びがむしろ良好なのと対照的)。高コルチゾール血症はゴナドトロピン分泌を抑えるため、成人で月経異常や性欲低下を生じることはあるが、これは二次的な変化であり、性腺機能低下症を主徴とする疾患としては扱われない。低身長を伴う性腺機能低下症として最も典型的なのはPrader-Willi症候群であり、本選択肢は選ばない。
- ×c. Klinefelter症候群
誤り。Klinefelter症候群は男性にX染色体が過剰にある染色体異常(代表的な核型は47,XXY)で、精巣が小さく硬く、精子形成障害による無精子症(不妊)とテストステロン低値を示す。精巣自体の障害なので、LH・FSHは高値の高ゴナドトロピン性性腺機能低下症である。性ホルモン不足で骨端線閉鎖が遅れ、四肢の長い類宦官体型の高身長となる。女性化乳房もみられる。性腺機能低下症ではあるが高身長であるため、条件を満たさない。
- ○d. Prader-Willi症候群
正しい。Prader-Willi症候群は15番染色体長腕(15q11-q13)の父親由来の遺伝子が働かないことで生じるゲノムインプリンティング疾患である。原因は父由来染色体の欠失が最も多く、ほかに母性片親性ダイソミーやインプリンティング異常がある。新生児期の筋緊張低下と哺乳障害に始まり、幼児期以降に過食と肥満、低身長、小さな手足、アーモンド様の眼などの特異顔貌、知的障害(精神運動発達遅滞)、行動異常がみられる。性腺機能低下症(主に視床下部性の低ゴナドトロピン性)を伴い、男児では停留精巣や小陰茎、思春期発来の遅れ・不全がみられる。成長ホルモン分泌不全も伴うことが多く、低身長に対して成長ホルモン治療が行われる。低身長と性腺機能低下症を併せもつ代表的疾患である。
- ×e. McCune-Albright症候群
誤り。McCune-Albright症候群は、Gsαタンパクをコードする遺伝子(GNAS)の活性化変異が体細胞モザイクとして生じる疾患で、多骨性線維性骨異形成、辺縁が不整な(「メイン州の海岸線状」と表現される)カフェオレ斑、ゴナドトロピン非依存性の思春期早発症を三主徴とする。女児に多い。性腺機能は低下ではなく、むしろ自律的に亢進している。なお、思春期早発では一時的に身長が伸びるものの骨端線が早く閉じるため、最終身長は低くなりうる。
性腺機能低下症の分類
・中枢性(低ゴナドトロピン性): LH・FSHが低値。視床下部・下垂体近傍の腫瘍(頭蓋咽頭腫など)、Kallmann症候群(嗅覚障害を伴う)、中隔視神経形成異常症、Prader-Willi症候群、Laurence-Moon-Biedl(Bardet-Biedl)症候群、Fröhlich症候群(肥満性性器発育不全症)など。 ・原発性(高ゴナドトロピン性): LH・FSHが高値。Turner症候群、Klinefelter症候群、性腺形成不全、放射線・化学療法後の性腺障害など。
身長との関係で整理
・高身長+性腺機能低下: Klinefelter症候群、Kallmann症候群など(骨端線閉鎖遅延による類宦官体型)。 ・低身長+性腺機能低下: Prader-Willi症候群、Turner症候群(45,X。原発性無月経と低身長)、下垂体機能低下症(成長ホルモンとゴナドトロピンの複合欠損)など。 ・高身長で性腺機能は正常: Marfan症候群、ホモシスチン尿症、体質性高身長など。 ・思春期早発(一時的な高身長→最終的に低身長になりうる): McCune-Albright症候群、中枢性思春期早発症など。
Prader-Willi症候群とAngelman症候群
どちらも15q11-q13の異常によるインプリンティング疾患である。父由来の遺伝子が働かないとPrader-Willi症候群、母由来のUBE3A遺伝子が働かないとAngelman症候群(重度知的障害、てんかん、よく笑う、失調性歩行)となる。
POINT
・Prader-Willi症候群=15q11-q13の父性発現遺伝子の欠失などによるインプリンティング疾患。新生児期の筋緊張低下→過食・肥満、低身長、低ゴナドトロピン性性腺機能低下、知的障害、特異顔貌。 ・Klinefelter症候群は性腺機能低下だが高身長(高ゴナドトロピン性、類宦官体型)。 ・Marfan症候群は高身長で性腺機能正常、McCune-Albright症候群は思春期早発。 ・Cushing症候群は小児で肥満+成長停止(低身長)を呈するが、性腺機能低下症を主徴とする疾患ではない。
