StudyMed医師国家試験

首が曲がらない、膝が伸びない―「髄膜が引っ張られる痛み」で読み解く髄膜刺激症候

第100回医師国家試験 G問題 第73問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第73問

髄膜刺激症候でないのはどれか。

  1. a.頭痛
  2. b.けいれん
  3. c.項部硬直
  4. d.Kernig徴候
  5. e.Brudzinski徴候

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、髄膜刺激症候に含まれないものを選ぶ問題だ。ポイントは症状を丸暗記するのではなく、髄膜が刺激されて起こる症状なのか、脳そのものの障害で起こる症状なのか、という発生機序で区別すること。まず、髄膜刺激症候がどんなときに出るか分かるかな。
医学生医学生
髄膜炎やくも膜下出血ですよね。くも膜下腔に炎症や血液があるときに出ると習いました。
ドクタードクター
その通り。くも膜下腔の炎症や出血で、髄膜やそこを通る神経根が刺激されて起こる症状・徴候をまとめて髄膜刺激症候と呼ぶ。自覚症状と他覚所見に分けて整理しよう。自覚症状にはどんなものがある?
医学生医学生
頭痛と、悪心・嘔吐でしょうか。でも脳には痛覚がないと聞いたので、頭痛がなぜ起こるのか不思議でした。
ドクタードクター
いい疑問だね。脳実質そのものには痛覚受容器がほとんどないけれど、硬膜や脳底部の血管周囲には痛覚線維が豊富にある。炎症や出血でそこが刺激されるから頭痛が起こるんだ。羞明、つまりまぶしさを伴うことも多い。くも膜下出血なら「突然の、人生最悪の頭痛」が典型だね。
医学生医学生
頭痛は髄膜刺激症候の代表ということですね。では他覚所見の項部硬直は、どう診るんでしたっけ。
ドクタードクター
仰臥位の患者の後頭部に手を添えて頭を持ち上げ、首を前屈させる。抵抗があって十分に曲がらず、痛がって顔をしかめれば陽性だ。首を前に曲げると脊髄と髄膜が頭側へ引っ張られて痛みが生じ、それを防ごうと項部の筋が反射的に緊張するんだ。
医学生医学生
神経内科の実習で、パーキンソン病の患者さんの首も硬かったのですが、あれも項部硬直ですか。
ドクタードクター
よく気づいたね。それは筋強剛で、前屈でも回旋でも抵抗がある。項部硬直は前屈で抵抗が強い一方、左右への回旋は比較的保たれることが多い。この違いで区別できるよ。
医学生医学生
Kernig徴候とBrudzinski徴候は、名前は覚えていてもどっちがどっちか混乱します。
ドクタードクター
動かす部位で覚えるといい。Kernig徴候は、仰臥位で股関節と膝関節を90度に曲げた状態から膝を伸ばそうとすると、痛みと抵抗で伸ばしきれない所見。膝を伸ばすと坐骨神経とその神経根が引き伸ばされ、炎症のある髄膜・神経根が刺激されるからだ。Brudzinski徴候は、首を他動的に前屈させると両側の股関節と膝関節が自然に曲がる現象で、神経根の緊張を和らげようとする反射的な動きと解釈される。
医学生医学生
Kernigは膝を伸ばす、Brudzinskiは首を曲げると脚が曲がる、ですね。どちらも髄膜や神経根が引っ張られる痛みで説明できるんだ。
ドクタードクター
そう、他覚所見はすべて「引き伸ばされる痛みとそれを避ける防御反応」で理解できる。では残るけいれんはどうだろう。
医学生医学生
髄膜炎の患者さんがけいれんを起こすこともあると思うので、含まれる気もしてしまいます。
ドクタードクター
そこが迷いどころだね。けいれんは大脳皮質の神経細胞が異常に同期して興奮することで起こる症状で、脳実質の障害を示す所見なんだ。髄膜炎で炎症が脳実質に及んだ髄膜脳炎ならけいれんを伴うことはあるけれど、それは髄膜が刺激された結果ではない。だから髄膜刺激症候には含めない。これが正解だ。
医学生医学生
髄膜の刺激なのか、脳実質の障害なのか、という機序で分けるわけですね。
ドクタードクター
その通り。臨床での注意点もまとめておこう。髄膜刺激症候に意識障害、けいれん、局所神経症状が加わったら、髄膜脳炎や脳炎、脳膿瘍などを考える必要がある。また乳幼児や高齢者、意識障害が深い患者では髄膜刺激症候がはっきりしないことがあり、くも膜下出血の発症直後も項部硬直が目立たないことがある。
医学生医学生
救急外来の実習で、jolt accentuationという診察法も見ました。頭を左右に振ると頭痛が強くなるかを確かめるものでした。
ドクタードクター
それも髄膜刺激を示唆する所見として使われるね。そしてKernig徴候とBrudzinski徴候は特異度は比較的高いけれど感度が低いとされ、陰性でも髄膜炎は否定できない。乳児なら大泉門の膨隆も参考になる。疑わしければ禁忌がないことを確認したうえで腰椎穿刺による髄液検査を行う、という姿勢が大切だよ。

まとめ

髄膜刺激症候は、髄膜炎やくも膜下出血などでくも膜下腔の髄膜・神経根が刺激されて生じる症状・徴候で、自覚症状として頭痛・悪心・嘔吐・羞明、他覚所見として項部硬直・Kernig徴候・Brudzinski徴候があります。他覚所見はいずれも、頸部や下肢の動きで髄膜・神経根が引き伸ばされる痛みと、それを避ける防御的な筋緊張・反射として理解できます。一方、けいれんは大脳皮質の神経細胞の異常興奮による脳実質の症状で、髄膜脳炎などで伴うことはあっても髄膜刺激症候には含めません。項部硬直は回旋が比較的保たれる点で筋強剛と区別でき、Kernig徴候・Brudzinski徴候は感度が低いため陰性でも髄膜炎を否定できない点が臨床上重要です。症状を発生機序で分類する視点は、意識障害やけいれんを伴う中枢神経感染症の評価にもそのまま役立ちます。

解答・解説

正解はbです

髄膜刺激症候とは、くも膜下腔に炎症(髄膜炎)や出血(くも膜下出血)などが起こり、髄膜やそこを走る神経根が刺激されることで現れる症状・徴候の総称である。自覚症状としては頭痛、悪心・嘔吐、羞明(まぶしさ)があり、他覚所見としては項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候が代表的である。他覚所見はいずれも、頸部や下肢を動かして髄膜・神経根が引き伸ばされたときに生じる痛みと、それを避けようとする防御的な筋緊張・反射によって説明できる。 一方、けいれんは大脳皮質の神経細胞が異常に同期して興奮することで起こる症状であり、脳実質の障害を示す所見である。髄膜炎の経過中に炎症が脳実質へ波及すれば(髄膜脳炎)けいれんを伴うことはあるが、髄膜への刺激そのものから生じる症候ではない。本問は「髄膜刺激症候でないもの」を問うているので、症状の発生機序が髄膜刺激によるものか、脳実質の障害によるものかを区別できるかがポイントである。

選択肢考察

  1. ×a.  頭痛

    頭痛は髄膜刺激症候の代表的な自覚症状である。脳実質そのものには痛覚受容器がほとんどないが、硬膜や脳底部の血管周囲には痛覚線維が豊富に分布している。炎症や出血によってこれらが刺激されると頭痛が起こる。悪心・嘔吐や羞明を伴うことが多い。くも膜下出血では「突然の、人生で最悪の頭痛」として発症するのが典型である。

  2. ○b.  けいれん

    けいれんは、大脳皮質の神経細胞が過剰に興奮することで起こる症状であり、脳実質の障害(脳炎、脳梗塞、脳腫瘍、代謝異常など)を示唆する。髄膜炎で炎症が脳実質にまで及んだ場合や、くも膜下出血などで皮質が刺激された場合にけいれんを伴うことはあるが、それは髄膜が刺激された結果として起こる症候とは区別される。したがって、けいれんは髄膜刺激症候には含めない。

  3. ×c.  項部硬直

    項部硬直は、仰臥位の患者の後頭部に手を添えて頭部を持ち上げ、頸部を前屈させたときに抵抗があって十分に曲がらない所見である。頸部の前屈で脊髄と髄膜が頭側へ引っ張られて痛みが生じ、それを防ごうとして項部の筋が反射的に緊張するために起こる。患者は痛みを訴えたり顔をしかめたりする。左右に回旋させる動きは比較的保たれることが多く、パーキンソン病などの筋強剛(前屈・回旋ともに抵抗がある)との区別に役立つ。

  4. ×d.  Kernig徴候

    Kernig徴候は、仰臥位で一側の股関節と膝関節をそれぞれ90度に曲げた状態から、膝を伸ばしていこうとすると、痛みと抵抗のために伸展が制限される所見である。一般に膝関節の角度が135度程度まで開く前に抵抗が生じる場合を陽性とする。膝の伸展により坐骨神経とその神経根が引き伸ばされ、炎症のある髄膜・神経根が刺激されるためと考えられている。

  5. ×e.  Brudzinski徴候

    Brudzinski徴候(項部徴候)は、仰臥位の患者の頸部を他動的に前屈させると、両側の股関節と膝関節が自然に屈曲する現象である。頸部前屈で脊髄・髄膜が頭側へ牽引されたとき、下肢を曲げることで神経根の緊張を和らげようとする反射的な動きと解釈される。

髄膜刺激症候の整理

・自覚症状: 頭痛、悪心・嘔吐、羞明 ・他覚所見: 項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候、jolt accentuation(頭を左右に1秒間に2〜3回振ると頭痛が強くなる所見)

髄膜刺激症候がみられる主な疾患

・髄膜炎(細菌性、ウイルス性、結核性、真菌性、癌性など) ・くも膜下出血

注意点

・乳幼児や高齢者、意識障害が深い患者では髄膜刺激症候がはっきりしないことがあるため、所見がないことだけで髄膜炎を否定しない。乳児では大泉門の膨隆が参考になる。 ・くも膜下出血では、発症直後には項部硬直がまだ目立たないことがある。 ・Kernig徴候とBrudzinski徴候は特異度は比較的高いが感度は低いとされ、陰性でも髄膜炎は除外できない。疑わしい場合は禁忌がないことを確認したうえで腰椎穿刺による髄液検査を行う。

意識障害・けいれんを伴う場合

髄膜刺激症候に加えて意識障害、けいれん、局所神経症状を伴う場合は、炎症が脳実質に及んだ髄膜脳炎や脳炎、あるいは脳膿瘍などの合併を考える。

POINT

・髄膜刺激症候: 頭痛、悪心・嘔吐、羞明、項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候。 ・けいれんは神経細胞の異常興奮による脳実質の症状であり、髄膜刺激症候には含めない。 ・項部硬直は前屈のみで抵抗があり、回旋は比較的保たれる点で筋強剛と区別する。 ・Kernig徴候: 股関節・膝関節を90度に曲げた状態から膝を伸ばせない。Brudzinski徴候: 頸部前屈で両下肢が屈曲する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。