脳幹に現れる「ミッキーマウス」―横断像で中脳レベルを見抜く画像解剖
第100回医師国家試験 G問題 第47問
国試問題にチャレンジ
頭部単純MRIのT1強調像を示す。 観察されるのはどれか。

- a.松果体
- b.下垂体
- c.中脳
- d.橋
- e.延髄
対話形式の解説
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ドクターまとめ
頭部MRIの横断像では、脳幹の断面の形からスライスの高さを判定できます。左右の大脳脚と脚間窩による「ミッキーマウス」様の形は中脳の特徴で、前方に鞍上槽と視交叉、外側に海馬・扁桃体、後方に小脳が見えることも中脳レベルを裏づけます。橋は丸く膨らんだ橋底部と第四脳室、延髄は小さな円形の断面に錐体とオリーブが特徴で、松果体はより頭側の第三脳室後端、下垂体はより尾側のトルコ鞍内で観察されます。中脳の内部には大脳脚(錐体路)、黒質、赤核、中脳水道、四丘体が並び、Parkinson病や動眼神経麻痺などの病態理解にも直結します。高さごとのランドマークを押さえることは、脳卒中や腫瘍の病変部位を正確に読み取る読影の土台になります。
解答・解説
正解はcです
頭部MRI横断像(水平断)から、スライスの高さを判定する画像解剖の問題である。
画像の所見
・画像中央やや後方に、前外側へ張り出す左右一対の太い構造(大脳脚)と、その間の切れ込み(脚間窩)をもつ、いわゆる「ミッキーマウス」様の形をした脳幹が写っている。これは中脳の横断面に特徴的な形である。 ・中脳の前方には脳脊髄液で低信号にみえる鞍上槽(視交叉槽)があり、その中に視交叉〜視索がみえる。 ・中脳の両外側には側頭葉内側部(鉤、扁桃体、海馬)が位置し、中脳を囲むように迂回槽がある。 ・後方には小脳(虫部と半球)の脳溝の模様がみえ、前方には前頭葉の眼窩面が写っている。
スライスの高さの判定
脳幹は上から中脳・橋・延髄の順に並ぶ。横断像で脳幹の形は高さにより変わる。 ・中脳: 左右の大脳脚と脚間窩により、前方に二つの突出をもつ形になる。後方には中脳水道と四丘体(上丘・下丘)がある。 ・橋: 前方に大きく丸く膨らんだ橋底部をもち、後方に第四脳室を挟んで小脳と接する。外側には中小脳脚がある。 ・延髄: 小さな円形〜楕円形で、前面に錐体、外側にオリーブの膨らみがみえる。大後頭孔の高さに近い。 本画像は大脳脚と脚間窩が明瞭で、前方に鞍上槽・視交叉がみえることから、中脳レベルの横断像と判断できる。設問はこのスライスで観察される構造を選ぶもので、中脳が該当する。
選択肢考察
- ×a. 松果体
誤り。松果体は第三脳室後端、中脳上丘のすぐ上方(後交連と手綱交連の間の高さ)に位置し、本スライスよりも頭側の、第三脳室・視床が写る断面で観察される。成人では石灰化していることが多く、CTでは高吸収として同定しやすい。本画像の高さでは中脳上部の後方に四丘体槽がみえる程度で、松果体そのものは写っていない。
- ×b. 下垂体
誤り。下垂体はトルコ鞍の中に位置し、鞍上槽・視交叉よりも尾側(下方)にある。本画像は鞍上槽と視交叉が写る高さであり、下垂体はこれより下のスライスで観察される。なお下垂体の評価には矢状断・冠状断の薄いスライスが適しており、T1強調像で下垂体後葉は正常でも高信号(bright spot)を示す。
- ○c. 中脳
正解。画像中央に左右の大脳脚とその間の脚間窩がみえ、中脳の横断面に特徴的な形をしている。中脳前方には鞍上槽と視交叉、両外側には側頭葉内側部(海馬・扁桃体)、後方には小脳がみえ、いずれも中脳レベルの横断像に合致する所見である。大脳脚には錐体路などの下行線維が通り、その背側には黒質、さらに背側に被蓋(赤核など)、中脳水道、四丘体が並ぶ。
- ×d. 橋
誤り。橋は中脳より尾側に位置し、横断像では前方に丸く大きく膨らんだ橋底部として描出され、背側に第四脳室、外側に中小脳脚を介して小脳半球と連続する。本画像の脳幹は前方が二つに分かれた大脳脚の形であり、橋の丸い輪郭ではない。
- ×e. 延髄
誤り。延髄は橋のさらに尾側、大後頭孔付近の高さにあり、横断像では小さな円形〜楕円形で、前面に錐体、前外側にオリーブの膨らみがみえる。その高さでは側頭葉や視交叉は写らず、小脳扁桃や大後頭孔周囲が描出されるため、本画像とは合わない。
横断像での主なランドマーク(頭側→尾側)
・側脳室体部レベル: 側脳室、脳梁 ・基底核・視床レベル: 内包、尾状核、被殻、視床、第三脳室。後方に松果体(石灰化が多い) ・中脳レベル: 大脳脚、脚間窩、中脳水道、四丘体槽、鞍上槽(視交叉)、側頭葉内側部(海馬・扁桃体)、迂回槽 ・橋レベル: 橋底部、第四脳室、中小脳脚、小脳半球、内耳道(顔面神経・内耳神経が通る) ・延髄レベル: 錐体、オリーブ、小脳扁桃、大後頭孔
中脳の内部構造(腹側→背側)
大脳脚(皮質脊髄路・皮質延髄路・皮質橋路)→ 黒質(Parkinson病で変性)→ 被蓋(赤核、動眼神経核など)→ 中脳水道 → 中脳蓋(上丘・下丘)
T1強調像とT2強調像の見分け方
T1強調像では脳脊髄液が低信号(黒)、白質が灰白質よりやや高信号にみえる。T2強調像では脳脊髄液が高信号(白)になる。本画像は脳槽や脳溝が黒く描出されており、T1強調像の特徴に合う。
POINT
・中脳の横断像: 大脳脚と脚間窩による「ミッキーマウス」様の形 ・中脳レベルでは前方に鞍上槽・視交叉、外側に海馬・扁桃体、後方に小脳がみえる ・脳幹の高さの判定: 中脳(大脳脚)→ 橋(丸い橋底部+第四脳室)→ 延髄(錐体・オリーブ) ・松果体は中脳より上方(第三脳室後端)、下垂体はトルコ鞍内で視交叉より下方
