StudyMed医師国家試験

脳幹に現れる「ミッキーマウス」―横断像で中脳レベルを見抜く画像解剖

第100回医師国家試験 G問題 第47問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第47問

頭部単純MRIのT1強調像を示す。 観察されるのはどれか。

第100回 G問題 第47問の問題画像
  1. a.松果体
  2. b.下垂体
  3. c.中脳
  4. d.橋
  5. e.延髄

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は頭部MRIの横断像を1枚見て、それが脳のどの高さで切った断面かを判定する画像解剖の問題だ。カギは画像の中央にある脳幹の「形」。脳幹は高さによって断面の形がはっきり変わるから、そこを手がかりにしよう。
医学生医学生
選択肢に松果体や下垂体も並んでいて、正直どれも写っていそうに見えてしまいます。
ドクタードクター
最初はそう感じるよね。まずは画像の種類から確認しよう。脳槽や脳溝が黒く見えているけれど、これは何を意味するかな。
医学生医学生
脳脊髄液が黒いのでT1強調像ですね。CBTの勉強で「水が白いのがT2」と覚えました。
ドクタードクター
その通り。T1強調像では脳脊髄液が低信号で、白質が灰白質よりやや明るく見える。では本題の脳幹を見てみよう。画像の中央やや後方に、前外側へ左右一対の太い張り出しがあって、その間に切れ込みがある構造が見える。
医学生医学生
あ、解剖実習で脳を切ったときに見た「ミッキーマウスの顔」の形ですか。
ドクタードクター
まさにそれ。左右の張り出しが大脳脚で、間の切れ込みが脚間窩だ。この形は中脳の横断面に特徴的なんだ。さらに周りも確認すると、前方には脳脊髄液で黒く抜ける鞍上槽があって視交叉が見え、両外側には海馬や扁桃体などの側頭葉内側部、後方には小脳の脳溝の模様がある。すべて中脳レベルの横断像に合う所見だね。
医学生医学生
だから正解は中脳なんですね。では橋とはどう見分ければいいですか。
ドクタードクター
橋は中脳より下にあって、横断像では前方が二つに分かれず、丸く大きく膨らんだ橋底部として見える。背側には第四脳室があり、外側は中小脳脚を介して小脳半球とつながる。前方が二つに割れた今回の形とは違うね。
医学生医学生
延髄はもっと小さくて丸い断面でしたよね。
ドクタードクター
そう。延髄は大後頭孔に近い高さで、小さな円形から楕円形をしていて、前面に錐体、外側にオリーブの膨らみが見える。その高さでは側頭葉や視交叉は写らず、小脳扁桃が見えてくるから、今回の画像とは合わない。
医学生医学生
松果体は中脳の後ろにあるイメージだったので、写っていてもおかしくない気がしました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。松果体は第三脳室の後端、中脳の上丘のすぐ上にある。つまり今回より少し頭側、視床や第三脳室が写るスライスで見えるんだ。成人では石灰化していることが多いので、CTだと高吸収として見つけやすい。
医学生医学生
下垂体は視交叉の近くなので、こちらも写りそうに思えます。
ドクタードクター
近いけれど、下垂体はトルコ鞍の中にあって、鞍上槽や視交叉よりも下にある。だから視交叉が見えるこの高さでは写らない。下垂体を評価するなら、矢状断や冠状断の薄いスライスが向いている。T1強調像で下垂体後葉が正常でも高信号を示す、いわゆるbright spotも覚えておこう。
医学生医学生
脳幹の形で高さを決めて、周りの脳槽や側頭葉で裏づける、という流れですね。
ドクタードクター
その通り。臨床で役立つ発展知識も押さえておこう。中脳の内部は腹側から背側へ、大脳脚、黒質、赤核などを含む被蓋、中脳水道、上丘・下丘の順に並ぶ。大脳脚には錐体路が通り、黒質はParkinson病で変性する部位だ。
医学生医学生
神経内科の実習で、Parkinson病の患者さんの画像を見ながら黒質の話を聞きました。部位がつながると覚えやすいです。
ドクタードクター
そうやって画像と病態を結びつけるのが大切だよ。たとえば中脳の病変では動眼神経麻痺と対側の片麻痺が組み合わさることがあるし、中脳水道が狭くなれば水頭症の原因になる。横断像の高さごとのランドマークを、上から側脳室、基底核・視床、中脳、橋、延髄と順番に言えるようにしておくと、読影がぐっと楽になる。

まとめ

頭部MRIの横断像では、脳幹の断面の形からスライスの高さを判定できます。左右の大脳脚と脚間窩による「ミッキーマウス」様の形は中脳の特徴で、前方に鞍上槽と視交叉、外側に海馬・扁桃体、後方に小脳が見えることも中脳レベルを裏づけます。橋は丸く膨らんだ橋底部と第四脳室、延髄は小さな円形の断面に錐体とオリーブが特徴で、松果体はより頭側の第三脳室後端、下垂体はより尾側のトルコ鞍内で観察されます。中脳の内部には大脳脚(錐体路)、黒質、赤核、中脳水道、四丘体が並び、Parkinson病や動眼神経麻痺などの病態理解にも直結します。高さごとのランドマークを押さえることは、脳卒中や腫瘍の病変部位を正確に読み取る読影の土台になります。

解答・解説

正解はcです

頭部MRI横断像(水平断)から、スライスの高さを判定する画像解剖の問題である。

画像の所見

・画像中央やや後方に、前外側へ張り出す左右一対の太い構造(大脳脚)と、その間の切れ込み(脚間窩)をもつ、いわゆる「ミッキーマウス」様の形をした脳幹が写っている。これは中脳の横断面に特徴的な形である。 ・中脳の前方には脳脊髄液で低信号にみえる鞍上槽(視交叉槽)があり、その中に視交叉〜視索がみえる。 ・中脳の両外側には側頭葉内側部(鉤、扁桃体、海馬)が位置し、中脳を囲むように迂回槽がある。 ・後方には小脳(虫部と半球)の脳溝の模様がみえ、前方には前頭葉の眼窩面が写っている。

スライスの高さの判定

脳幹は上から中脳・橋・延髄の順に並ぶ。横断像で脳幹の形は高さにより変わる。 ・中脳: 左右の大脳脚と脚間窩により、前方に二つの突出をもつ形になる。後方には中脳水道と四丘体(上丘・下丘)がある。 ・橋: 前方に大きく丸く膨らんだ橋底部をもち、後方に第四脳室を挟んで小脳と接する。外側には中小脳脚がある。 ・延髄: 小さな円形〜楕円形で、前面に錐体、外側にオリーブの膨らみがみえる。大後頭孔の高さに近い。 本画像は大脳脚と脚間窩が明瞭で、前方に鞍上槽・視交叉がみえることから、中脳レベルの横断像と判断できる。設問はこのスライスで観察される構造を選ぶもので、中脳が該当する。

選択肢考察

  1. ×a.  松果体

    誤り。松果体は第三脳室後端、中脳上丘のすぐ上方(後交連と手綱交連の間の高さ)に位置し、本スライスよりも頭側の、第三脳室・視床が写る断面で観察される。成人では石灰化していることが多く、CTでは高吸収として同定しやすい。本画像の高さでは中脳上部の後方に四丘体槽がみえる程度で、松果体そのものは写っていない。

  2. ×b.  下垂体

    誤り。下垂体はトルコ鞍の中に位置し、鞍上槽・視交叉よりも尾側(下方)にある。本画像は鞍上槽と視交叉が写る高さであり、下垂体はこれより下のスライスで観察される。なお下垂体の評価には矢状断・冠状断の薄いスライスが適しており、T1強調像で下垂体後葉は正常でも高信号(bright spot)を示す。

  3. ○c.  中脳

    正解。画像中央に左右の大脳脚とその間の脚間窩がみえ、中脳の横断面に特徴的な形をしている。中脳前方には鞍上槽と視交叉、両外側には側頭葉内側部(海馬・扁桃体)、後方には小脳がみえ、いずれも中脳レベルの横断像に合致する所見である。大脳脚には錐体路などの下行線維が通り、その背側には黒質、さらに背側に被蓋(赤核など)、中脳水道、四丘体が並ぶ。

  4. ×d.  橋

    誤り。橋は中脳より尾側に位置し、横断像では前方に丸く大きく膨らんだ橋底部として描出され、背側に第四脳室、外側に中小脳脚を介して小脳半球と連続する。本画像の脳幹は前方が二つに分かれた大脳脚の形であり、橋の丸い輪郭ではない。

  5. ×e.  延髄

    誤り。延髄は橋のさらに尾側、大後頭孔付近の高さにあり、横断像では小さな円形〜楕円形で、前面に錐体、前外側にオリーブの膨らみがみえる。その高さでは側頭葉や視交叉は写らず、小脳扁桃や大後頭孔周囲が描出されるため、本画像とは合わない。

横断像での主なランドマーク(頭側→尾側)

・側脳室体部レベル: 側脳室、脳梁 ・基底核・視床レベル: 内包、尾状核、被殻、視床、第三脳室。後方に松果体(石灰化が多い) ・中脳レベル: 大脳脚、脚間窩、中脳水道、四丘体槽、鞍上槽(視交叉)、側頭葉内側部(海馬・扁桃体)、迂回槽 ・橋レベル: 橋底部、第四脳室、中小脳脚、小脳半球、内耳道(顔面神経・内耳神経が通る) ・延髄レベル: 錐体、オリーブ、小脳扁桃、大後頭孔

中脳の内部構造(腹側→背側)

大脳脚(皮質脊髄路・皮質延髄路・皮質橋路)→ 黒質(Parkinson病で変性)→ 被蓋(赤核、動眼神経核など)→ 中脳水道 → 中脳蓋(上丘・下丘)

T1強調像とT2強調像の見分け方

T1強調像では脳脊髄液が低信号(黒)、白質が灰白質よりやや高信号にみえる。T2強調像では脳脊髄液が高信号(白)になる。本画像は脳槽や脳溝が黒く描出されており、T1強調像の特徴に合う。

POINT

・中脳の横断像: 大脳脚と脚間窩による「ミッキーマウス」様の形 ・中脳レベルでは前方に鞍上槽・視交叉、外側に海馬・扁桃体、後方に小脳がみえる ・脳幹の高さの判定: 中脳(大脳脚)→ 橋(丸い橋底部+第四脳室)→ 延髄(錐体・オリーブ) ・松果体は中脳より上方(第三脳室後端)、下垂体はトルコ鞍内で視交叉より下方

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。